『レス(less)の時代の旅行業経営』 |
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講師:日本旅行業協会(JATA)会長 髙橋 広行氏 参加者:合計45名(リアル28名・オンライン17名)/うちJWTC計17名(リアル13名・オンライン4名) 開催時間:2023年7月20日(木) 19:00~20:00 |
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髙橋会長より、本題の前に現在の業界の現況についてお話いただきました。 |
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1.デジタル化 「キャッシュレス、チケットレス、コンタクトレス、ペーパーレス等々、いろんなものがデジタル化によって置き換わっており、世の中のデジタル化の流れはもはや避けようがない。これまで人の力に頼ってやってきた我々リアルエージェントにとって、このデジタル化の流れといかに折り合いをつけていくか、が大きな経営課題となってくる。 |
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2.SDGs 「SDGsへの対応なしでは、企業はやっていけない、そういう時代であり、旅行業も例外ではない。SDGsの17の目標があるが、それぞれに共通して言えることは、“なくそう、やめよう、少なくしよう”というもので、今日のテーマの「Less」に関係している。 「ここで、当社の商品やサービス面での取り組みの一端を紹介する。これは、第一回のJATA SDGsアワードの優秀をいただいたものである。 これは、企業などのMICE主催者自体のカーボンニュートラルを実現するのと併せて、MICEの参加者に対して、SDGsに取り組んでいるという企業姿勢をアピールできるという効果もある。今、各ホテルやMICE施設と連携して取り組みを進めている。 |
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3.人口減少 「人口が少なくなると必然的にマーケットが縮むことになるが、これにどう対処していくかも業界にとって大きな課題である。 2018年ベースで、日本人の出国率が14.9%に対して、韓国は104%、台湾は66%でその差は非常に大きい。そこで、例えば新成人全員に対して無料でパスポートを配布したらどうかというようなことを首相や観光庁長官にも提言している。 |
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4.仕入環境の悪化 「我々のビジネスの生命線である仕入に関して、世の中の潮流が、スタティックからダイナミックに移行している。 |
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5.持たない経営 「我々は今回のコロナ禍で大きく企業体力を毀損した。これからはいかに経営に対する負荷を少なくいしていくかが求められる。そのためにはこれまでのような各社ごとの「個別対応型」から業界全体で連携する「協調・共創型」の対応が必要になってくると考える。 |
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6.経営のDE-RISK 「経営のリスクを減らすという観点では、最大の経営リスクのひとつが、コンプライアンスの問題である。もはや社会的な信用を失った企業は生きて行けない。コロナ禍でGo toトラベル事業、全国旅行支援、ワクチン接種事業など国や自治体のいわゆるBPO業務、すなわち公金に関わる事業機会が圧倒的に増えたが、残念ながらJATA会員会社による複数の不正事案が発生した。 |
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7.ジェンダーレス 「男女格差をなくすという課題も不可避である。これは一業界の話ではなく、世界的な問題である。先頃発表された日本のジェンダーギャップ指数は世界146カ国中125位という結果である。特に「政治」と「経済」の分野において最悪であり、女性議員や女性の経営者が圧倒的に少ないのがそれを表している。旅行業界においても同じような状況である。 先般、日本においてもようやくLGBT理解促進法が成立し、その名が示すとおりまず理解を深めることから始めようというものだが、たちまち宿泊施設ではその対応に苦慮している。 |
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8.ボーダーレス 「コロナ禍を経て、ハイブリッド型のMICEやWEBによるコミュニケーションの機会が増えて、より多くの国の人々と物理的な制限なしにつながることができるようになった。 なぜここまで大きな規模で会議が行われるのか。日本にいたら実感しづらいかもしれないが、ツーリズムが国と国との相互交流の上に成り立っている以上、世界の動きを捉えて対応していく、いわゆるグローバリゼーションが不可欠だからである。 日本のアウトバウンドもインバウンドも世界とのつながりなくして成り立たないことは明白なので、これからボーダーレス化がさらに進み、ますます世界との連携をキープすることが必要となる。 |
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講師の高橋会長はソフトな語り口でありながら、テンポも速く、充実した内容で、時には参加者に声掛けして、会場の参加者を巻き込み、雰囲気作りにも心配りを感じる事ができました。 |
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