テーマ:政府観光局はコロナ後のマーケティング展開をどのように計画しているか

日時:2023年4月6日(木)

登壇者:
フランス政府観光局 フレデリック・マゼンク日本局長
オーストラリア政府観光局 デレック・べインズ日本局長
ファシリテータ (株)マイルポスト 代表取締役 榊原史博様

参加人数:会場34名(内会員11名)、オンライン17名(内会員4名)、懇親会24名(内会員11名)

海外旅行自由化の1964年、12万8000人だった海外渡航者数は、2019年に旅行業界の長年の夢・目標の2000万人を突破し、旅行会社の地道な努力が実るとともに、そのビジネスモデルも評価されました。
しかし、2020年3月、コロナ感染者数増大による政府からの「海外渡航自粛要請」により、同年の海外渡航者数は317万人に減少、その後2021年には51,2万人、2022年277万人と2019年の海外渡航者数と比べて激減してしまいました。
そして、今年5月には、ウイルス感染症が5類に変更されることとなり、今、再び自由に海外旅行ができる時を迎えています。 

こうした状況を踏まえて、「政府観光局はコロナ後のマーケティング展開をどのように計画しているか」というテーマで、3人の登壇者をお迎えして今年最初のJWTC勉強会が開催されました。マーケティングの資料となる過去3年分のデータがなく、又、1時間半という短い時間でしたので、ファシリテーターの榊原様がおっしゃっていたように、具体的な計画案という細部の話にまでは至りませんでしたが、アフターコロナの観光を考える上で、多くのヒントを得ることができた密度の濃い貴重な勉強会となりました。以下が勉強会の概要をまとめたものです。

*フランス政府観光局=(仏)、オーストラリア政府観光局=(オ)、株式会社マイルポスト榊原様=(榊原)と表示

1: 海外市場復活が遅れている要因(榊原)

①経済的要因―航空運賃の高騰、インフレ、円安
②社会的環境要因―コロナ感染、ウクライナ侵攻、海外旅行に行かないことの習慣化
③旅行業界の要因―販売手法の変化、人手不足による対応の遅れ、収益の減少
④そのほかの要因―国民性(日本人はリスクを取りたくない)(仏)

2:海外旅行市場規模が2019年レベルまで復活するのはいつごろかの予測(榊原)

*2024年2月頃に65%回復? *IATA/JATAは2025年には100%戻るとの予測

3:復活時の市場の変化予測
≪出入国制限緩和後の入国者の状況≫ 

・オーストラリア

*入国者層(入国目的):ビジネス客→家族訪問→ワーキングホリデー→修学旅行→観光客の順。
*旅行スタイル:団体からFITへ  *性別:男50%女50%(カップル・夫婦中心)
   ▼   
♦復活時に求められる・予想される市場
―テーマ性のある旅、高価格に見合う付加価値のある旅、AIの活用

・フランス

*入国者層:訪問10回以上のリピーターで旅慣れた人が中心
*旅行スタイル:団体からFITへ  *性別:75%が女性
   ▼        
♦復活時に求められる・予想される市場
―女性を対象とした、より深いフランスの魅力が感じられる旅

サスティナブルツアーに対する見解(仏)
旅行者の関心は薄い。日常生活では環境保護に気を付けた生活を心がけるも、海外旅行に行ってまで
気を使いたくない。サスティナブルを謳っているホテルはバスタブを置かずシャワーのみというところもあるが、旅行者によっては、サービスが悪いホテルという見方をする場合もある。

4:旅行商品及び流通の変化と旅行会社の対応と役割の変化

コロナ前の2019年と比べると、OTA利用者の増加で、パンフレットによる対面販売(TTA)が減り店舗数が減少している。ただ、残念ながら現在の情報量では、旅行会社の役割を想定するだけのフィードバック情報は得られていない。(榊原)

(仏)

*コロナ後は、前述のとおり、渡航歴10回程度のリピーターの訪問客が多く、フランスを初めて訪問する人は少数で、マーケットが変化している。そのため、2019年までのものとは違う、リピーターに満足されるツアー内容が求められる。
*旅行会社は、販売したツアーの利用者数、客層などの調査を実施、次のプロモーションの参考にしてはどうか。

(オ)

*当面TTA(店舗販売・パンフレット利用)とOTAを併合した旅行会社が必要

(榊原)

*近年、プロモーション費用が少なくなってきているので厳しい状況ではあるが、旅行会社はデスティネーションのプロモーションを政府観光局と対等にできていない。任せきりにせず、対等のレベルでプロモーションができるような人材が求められる。

5:フランス・オーストラリア政府観光局のプロモーション展開題

*オーストラリア政府観光局は、“G‘day”ではじめようオーストラリア“”自分だけの冒険を見つけよう!“をキャッチコピーにイメージキャラクター「ルビー」と「ルイ」が観光地を案内するプロモーションビデオを放映

*仏政府観光局は“あなたのフランスはどんなところ?”をキャッチコピーに、若い女性が各地を訪問する日本人向けに作成されたおしゃれなアニメーションを放映

なお、勉強会に向けて両国のFGTO局長から勉強会へのビデオメッセージがありました。お二人とも女性であることから、日本におけるダイバーシティの取り組みの遅れを改めて感じました。プロモーションビデオは夫々の国の魅力ある観光資源を取り上げたレベルの高いものでした。(筆者感想)

以上が勉強会の概要です。
世の中の価値観が大きく変化し多様化している今の時代、旅行業界で働く人々は、旅のスタイルもオンラインツアー、バーチャルツアー、宇宙旅行をはじめ実に様々になり、その対応に苦慮されていると思います。
私は観光教育の世界に身を置いてきましたが、教育の現場にも今、大きな改革の波が押し寄せ先生方のご苦労は想像を超えるものがあります。
今日のお話では、海外旅行市場が2019年までの市場に戻るのは2025年頃ということでしたので、2年後には、マインドセットされた旅行会社がリスタートし、海外旅行市場が順調に回復することを願わずにはいられません。 

そして、JWTCのスローガンに桑江さん書かれていた「その変化を受け入れて“楽しもう”。そして、“また旅がしたい”、と思う人の背中を押して“楽しい”を伝えていくことの使命がJWTCだと確信しています」という思いは、旅行業界のみならず「観光」に関わる分野の全ての人々の共通の思いではないかと感じています。

勉強会と懇親会では、アフターコロナの観光を考える上での有意義な時間を過ごさせていただきました。企画部の皆様、ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。(124)

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